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佐藤正尚 南礀中題

6月27日、映画・本・ビール

和裁をした次の日は、どこかを散歩するか、本を読むかをしている。家人が歌舞伎に行くということで朝からTOHO Cinemas新宿でシン・エヴァを鑑賞した。確か4回目だったが人生を肯定することができる数少ないかけがえのないものであることを再確認した。ついでに、昼間から閃光のハサウェイを鑑賞することにしてチケットを買った。

昼食をつるかめ食堂で済ませて、シン・エヴァの論集を買いに紀伊國屋にいくが、発売されていなかった。気になっていた新刊の値段を確かめ、今度生協で買うことにして店を出た。1階のタバコ屋でなんとなく葉巻の値段が気になってみてみると、1500円あたりが一番安かった。シーシャ仲間の友人に、いろいろ比べて誕生日にでもプレゼントしようと思う。

伊勢丹とH&Mには挟まれたlemonでカプチーノを頼む。持っていたバトラーの『欲望の主体』を読了。久しく感じたことのない爽快な読後感。サルトルはこんなにも面白い思想家だったのか、と人生で初めて心から知った。80年代の終わりにこんな本を出していたというので、バトラーは偉大な哲学者だ。他の本もちゃんと読みたい。

映画館に戻って閃光を鑑賞した。いい映画だったが、登場人物の関係形式がお決まりのパターンだったので退屈した。めぐりあいや逆襲での会話劇が真剣なシーンほど意味不明なのにくらべて極めて明晰な会話がなされるのも悪くはないが、ケレン味にかけていて、ギギの意味不明さは単に「メンヘラ」表象を女性に押し付けているようで居心地が悪かった。逆襲では、シャァの最後のララァについての告白にこそそうした表現との釣り合いがとれていたが(全員どこか頭がおかしい)、今回はそうなっておらず、全体的なマチズモがどうにも気になった。小説が原作とはいえ、ギギが80歳の老人の愛人というのは、富野の年齢をどうしても重ねてしまい、辛いものがあった。とはいえ、夜戦の表現はここ最近のアニメ表現では抜群だった。明暗の絶妙な調整によって緊張感を演出させていたのはよかったし、市街戦ではモビルスーツが兵器としていかに驚異的であるのかを逃げ惑うハサウェイとギギを中心に演出していたのも良かった。

帰りに十字峡宇奈月ビールヴァルシュタイナーを買った。宇奈月ビールは、富山県黒部宇奈月で醸造されたケルシュだ。すっきりとした味わいで、IPAとはことなったほのかな甘さを感じる。時間がたったあとの苦味も強くなく、缶ビールながらじっくり飲むことができる。ヴァルシュタイナーは、ノイトライン・ヴェストファーレンで醸造されたピルスナーだ。口当たりが芳ばしい。麦の苦味が舌をざらつかせずに喉を通り、気がつけばもう一口を求めてしまう。ほとんどパンの味さえする。ビーフシチューにこのビールを合わせれば素敵な食事になるだろう。

ビールを飲みながら、洗濯物をして、食事を簡単に済ませて、読み返していたSelf-Reference Engineを読了。自分にとってゼロ年代があるとしたら、本当のところこれだなと思っていることに気づいた。ゴジラSPについて文章を書いていたので改めて読み返したわけだが、円城塔のすべての作品はこの本のテーマが何らかの形で展開されていることに気づいた。SPの論攷ではエモい一文を引いておこうと思う。