さやわか式ベストハンドレッドに影響を受けて、自分でもベストハンドレッド2021を作成。2021年1月から12月までに登場したコンテンツならなんでも対象にして、上位100を選出。暇な人はお付き合いください。
100位
シル・ヴ・プレジデント / P丸様
今年一番日本人に認知されたフランス語っぽいもの。エロゲ音楽に由来しているタイプのボカロ系の曲の特徴をよく捉え、かつ、ミームになるような編曲など、年代に最適化された音楽。ちなみに、「シル・ヴ・プレ、ル・プレジダン」とすると通用するフランス語になり、大統領にお願いすることになる。そして大統領にお願い、というか語りかけるシャンソンといえばBoris Vian / Le déserteur。
99位
秀和幡ヶ谷の変 / 秀和幡ヶ谷レジデンスの管理組合
秀和幡ヶ谷レジデンスの管理組合といえば、マンションの資産価値を下げるほどの体制を敷いて話題になっていたが、ついに理事交代になったそう。民主政が機能している不動産案件。一方で、NMRパイプテクター導入といった残念なマンションが多いので、マンションに住む気にはなかなかなれない。
98位
Pineapple Kryptonite (Official Music Video) / 新しい学校のリーダーズ
なんかよくわからんけど面白い感じがした。砂漠にセーラー服というシュルリアルな感じだけど、カット割りにコミカルさがなく、そのギャップが良かった。
97位
カウポーイビバップ / ALEX GARCIA LOPEZ
https://www.netflix.com/browse?jbv=80207033
実は良かったと思っているが、シーズンで打ち切りになってしまった。キャラの再解釈も正しく、ドラマとして成立していて、スペースオペラものとしては良かったのでは、という感想。そして、実はアニメはアニメーション表現によって物語のある種の空疎さが隠されていたということも明らかにしてくれたのでランクイン。
96位
閃光のハサウェイ / 村瀬修功
モビルスーツが飛び交う夜間での市街戦の描写は本当に良かった。物語についてはどうでもよかった。エコテロリズムについてかなり空疎だった。小説版とオチを変えるのかどうかは気になる。
95位
台本冊を入手 五輪開会式“崩壊” 全内幕 計ページにすべての変遷が / 「週刊文春」編集部
https://bunshun.jp/denshiban/articles/b1436
五輪開会式についての感想は、一般的には「良い」、または「関心がない」だと私は勤め先の人の話を聞いて思った。なので、大衆全体で文化に対する関心が低く、政府がそれを主導する気もない、ということが明らかになった。もはや、政治的資金を用いた大規模な行事の中で文化や技術を高めることは国内ではありえないのだろう。これは是非の問題ではなくて、今後の行政と芸術の関係のあり方について多くを教えてくれている。年東京オリンピックは忘れがたいものとなるだろう。
94位
豚バラのキムチーズサンドを焼いてハイボールをキメるだけの動画 / リロ氏のひとり遊びちゃんねる
意味もなくスタイリッシュで、凝っているようにみえてまったく大した料理を作っていないけれど、美味しそうに見える不思議な動画。クッキング動画の新しいスタイル。
93位
脱構築研究会 Association for Deconstruction(youtubeチャンネル) / 脱構築研究会 Association for Deconstruction
https://www.youtube.com/channel/UCrZIUDEX3fKAf1abz4EhHoA/featured
意味不明なほど硬派な哲学チャンネル。デリダの『条件なき大学』を思想的根拠にしているのかな、と勝手に思っている。
92位
Anya Taylor-Joy: In The Bag | Episode 54 | British Vogue / British Vogue
ドラマ『クイーンズ・ギャンビッド』で一躍時の人なったテイラー=ジョイのインタビュー。スペイン語・ロンドン英語のバイリンガルだが、 なのにスペイン語でインタビューに答えるところから始まり、こぶし大のクリスタル、オブシディアン、ターコイズなどを手にもつと安心するといって取り出すといった終始圧倒されるインタビュー。必見。
91位
パンツ(エアホールド) / MICHEL KLEIN
https://www.itokin.net/d/item/detail/MNLCM49170
スキニーパンツの中ではかなり革命的。伸縮性が高く、長時間履いていても疲れない。しかも、春先くらいなら、下にロングタイツ系の下着を穿かなくてもぜんぜんいけそう。
90位
国家と市場 ── 国際政治経済学入門 / スーザン・ストレンジ
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480510143/
2021年文庫化。解説にある通り、現代国際政治にそのまま当てはめることはできないが、やはり、「生産」・「金融」・「知識」・「安全保障」の四つの分析の基軸はいまでも通用する。
89位
火星の廃墟 / 佐藤正尚
http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3564
私が書きました。シン・エヴァンゲリオンにおける廃墟の美学について、思い出を交えたエッセイ。火星は好きな惑星です。来年は系外惑星についてもっと知りたい。
88位
Speaking of Happiness / Franz K Endo
All in Good Timeが界隈に衝撃を与えたEndoはいつのまにかAmazon Primeにも進出。Youtube作品のSpeaking of Happinessでは、All in Good Timeのサイケな演出を抑制して、カット割りが落ち着いている一方で、物語の表現もストレートになっていてわかりやすい。今後も期待。
87位
Presence V (feat. T-Pablow) [with 3exes] / STUTS、松たか子
デビュー当時のT-Pablowを知っていた人の誰が一体、松たか子とコラボすると考えていたのか。『大豆田とわ子と三人の元夫』は私がたまたま見た回で松たか子が、干していた敷布団が風に舞ったのを見て、「布団がふっとんだ」といってはにかんでいて、ジャンプショットの弛緩ぶりに視聴する気がなくなってしまったのだが、たぶんいいドラマなのだろう。
86位
新宿IKEA / IKEA
https://www.ikea.com/jp/ja/stores/shinjuku/
新宿はニトリに加えて、ができ、どちらも常に混んでいる。といえば、家具のレイアウトスペース再現だが、ほぼ単身世帯に焦点を当てているのが新宿店の特徴。買い物客は家族層も多く、フードを買い求める姿を見る。新宿の買い物文化を変える可能性がある。
85位
同志少女よ、敵を撃て / 逢坂冬馬
https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000014980/
物語の構成は抜群によかった。ただし、テーマは、そもそもの『戦争は女の顔をしていない』が強すぎて、あまり哲学的な深さがなかった。設定のラノベっぽさや、ロシア人のはずなのに日本人に理解しやすすぎる心理や行動が気になった。
84位
Street Sermons/Morray
ラップでは、チル寄りが趣味なので、私に対して抜群にヒット。ノースカロライナ州ファイエットビル出身の彼の見てきた世界を歌に込めていて、しかも聖歌隊にいた経験があるためかラップがうまいだけでなく、ただただ美声。サザン/ウェスト/イーストにとらわれない楽曲編成の今後に展開に期待。
83位
【世界一危険な仕事】ブラジルの金鉱山で億円以上儲けた男 / 丸山ゴンザレスの裏社会ジャーニー
たまに「丸山ゴンザレスの裏社会ジャーニー」を見ていて、ガリンペイロの話は面白かった。高度経済成長時代に世界に四散した日本人の奇妙な物語の顛末。
82位
Le livre ou la vie – Michel Houellebecq / Michel Houellebecq
新作anéantirが出版される前の最新のウエルベック御大の話しぶりはひたすら皮肉を言い続けるスタイルで、フランス的なユーモアを感じさせて大変良かった。なお、ウエルベックは昔のフランスのハードカバー装丁が好きで今回はこだわったそうだが、私はそういうのに全く関心がない。「文学は、(この世界の)流れから断ち切るような道具ではないのです(La littérature n’est pas, celui que, c’est un outil de déconnecxion par rapport au flux)」という断言が印象的だった。SFはそれができているらしく、『服従』のときには、リアルな政治シミュレーションを描くと日本では評判な作家だが、ラヴクラフト論からずっとリアリズムに対して批判的なことを改めて思い出させる。
81位
朝倉の古墳 ~いにしえの首長墓とその周辺~ / 甘木歴史資料館
https://www.city.asakura.lg.jp/ama-reki/nenkan_kikakuten.html
漢文の彫られた銅鏡を見ることが出来て本当に感動した。九州と大陸の近さ、神武天皇の東征がなぜ九州から始まったという物語にする必要があったのかがよくわかる展示だった。毎年似たような展示をしているのかもしれないが、たくさん貴重な銅鏡が見られたのは本当に良かった。
80位
リバー・ワールド / 川合大祐
http://www.kankanbou.com/books/poetry/senryu/0453
句集。川柳とのことだが、ほぼ無季自由律俳句。「トマト屋でトマトを売っている泣けよ」はなかなか衝撃的だった。現代詩は混迷していてまったくわからない世界に突入しているが、川柳というスタイルのためか、ギリギリわかる。値段も高くないので、現代詩として読むのも一興。
79位
【詠春拳×空手】あなたにできる?破壊力の秘密!現代格闘技と古流武術のトレーニングの違い/-熊澤 伸哉- Sinya Kumazawa
アランジョ・フェッボ・アレッサンドロの詠春拳の鍛錬動画。今もこんなことをやっている人がいることがすごい。完成された動作は美的な感奮も与える。スパークリングをしていて、かわしたはずの拳が熊澤の鼻にぶつかって折れてしまったそうだが、毎日コンクリートを殴っている拳なので、さもありなんと思った。
78位
ブラリ事件 人家族集団死の真相 / リーナ・ヤーダヴ
https://www.netflix.com/browse?jbv=81095095
インドで実際に起きた怪事件のドキュメンタリー。人の家族が集団で自殺するというもの。集団心理の怖さがよくわかる。また、メデイアの妄想としか言えない報道の数々も紹介されていて、センセーショナリズムについても内省させてくれる。
77位
Neeva / Neeva Inc
広告無し、サードパーティアプリに個人情報を渡すことでの売上もなし、支払いを課すことで検索をより良いものにする、というチャレンジ。ビジネス的に成功できそうにないが、検索を支配する権力の一つである資本力の優劣から逃れる理想論には共感。
76位
根のないフェミニズム フェミサイドに立ち向かったメガリアたち / キム・インミョン、カン・ユ、イ・ウォニュン、クク・チヘ、イ・ジウォン、ヒヨン、チョン・ナラ、パク・ソニョン
韓国のフェミニズム運動シーンが気になって読んでみると、思ったよりすごい世界が広がっていた。とはいえ、思い返すと日本の男子大学生や男性社会人でも少なからずここで取り上げられているようなことを日常的に言っているので、日本での出版も非常に頷ける。
75位
Wink / CHAI
「ほくろはチョコチップスかもね」が頭から離れない。ディスコ・パンクはほとんど聞かないが、このアルバムは日本語の言葉あそびが心地よく、よく聞いていた。
74位
ガールズ・メディア・スタディーズ / 田中東子編
http://www.hokuju.jp/books/view.cgi?cmd=dp&num=1169&Tfile=Data
メディアスタディーズの書籍でジェンダー研究だけをほどよくまとめた書籍はないので、この書籍の登場で最近のメディアスタディーズにおけるジェンダー研究概観を知ることができた。
73位
ヴィンツェンツォ / キム・ヒウォン、パク・ジェボム
https://www.netflix.com/browse?jbv=81365087
ソン・ジュンギ主演。のオク・テギョンも出ていて、豪華な配役。ユ・ジェミョンはヒット作に出過ぎていて怖い。韓国で養子になったイタリアンマフィアの韓国人が受取人が死亡して持ち主のいなくなった金塊を回収するためにマンションに行くが、すでに再開発計画があり住民は反対運動、人権派弁護士も事務所を構えて徹底抗戦、敏腕マフィアがコミカルな登場人物たちに振り回されて……、と実はわりとコメディ。暴力を正当化するためにオク・テギョンは相当なサイコパスな人物を演じさせられているが、韓国ドラマの一つの限界として、悪はわかりやすく悪、サイコパスにする、というものがある。とはいえ、コメディとシリアスの配分が絶妙で名作。
72位
レインコートキラー ソウル人連続殺人事件 / ジョン・チョイ、ロブ・シックススミス
https://www.netflix.com/browse?jbv=81087760
韓国の連続殺人事件を取材したドキュメンタリー。年代にあった戦後最悪の連続事件の関係者にインタビューしていく。韓国警察に初めてプロファイリングが本格的に導入されたのがこの事件だったそう。韓国におけるサイコパス表象の通俗化にはこの事件の犯人の報道が淵源なのかもしれない。
71位
哲学の女王たち / レベッカ・バクストン、リサ・ホワイティング
ボーヴォワールの解説はそれほど長くはなかったが、価値観をだいぶ変えられた。その他も記事として楽しく読めた。ただし、フッサールの草稿まとめをさせられていたエーディト・シュタインの記述は学術的に間違っている部分があるとのこと(https://twitter.com/GenkiUemura/status/1415516487859671046)。
70位
イカゲーム / ファン・ドンヒョク
https://www.netflix.com/watch/81262746
デスゲームを再構成することで世界的コンテンツにできることを示したドラマ。イカゲームを日本で製作できなかったを恥じるのはわかるけれど、剽窃の指摘をしている日本人はどうしようもないと思う。たぶん、そういう人たちは書影の登場するジャック・ラカン、台詞ででくるウィリアム・コングリーヴ、画面構成で参照されているジャック・タチなど全くわからないのだろう。私たちは努力すべきことがまだまだある。
69位
【1ヶ月熟成肉】美味しかったランキングトップ5 / ホルモンしま田
一ヶ月熟成肉シリーズはすべておすすめ。毎回紹介される様々なビールが気になってそれも飲みたくなる。古代からの食料保存技術に思いをはせることができる。ホルモンしま田では、熟成肉のほかに肉醤を作った回が良かった。
68位
TEIガイドラインにルビが導入:人文学向け国際デファクト標準に沿った日本語テキストデータの作成が容易になりました / 永崎研宣
TEIで公式にルビがサポートされることに。これはすばらしい試み。ルビ文化を訓点や脚注・欄外注と区別することは技術的に難しく、その労力は凄まじい。これが公式に採択されたことは日本語テキストのデジタル化に大きく貢献だろう。背景などをわかりやすく解説したのがこの記事。
67位
現代スピリチュアリティ文化論 / 伊藤雅之
気軽に手にとって読んだところ、ハラリの指摘にあるような個人に価値があると見出すヒューマニズムが現在最大の宗教というは、もっと丁寧に歴史を紐解くことができるとして、マインドフルネスブームの思想的な背景を追っていくのは読んでいて非常に面白かった。その手のことに関心がある人は必読。
66位
Who I Smoke / Yungeen Ace、 Spinabenz、 FastMoney Goon
誰もThousand Milesを殺人事件の暗示でサンプリングするなど思いつかなかっただろう。数年後誰も覚えていないだろうが、衝撃的なサンプリングだったのは間違いない。
65位
Criminal Lawyer Reacts to Spinabenz – Who I Smoke / CLR Bruce Rivers
Who I Smokeのリアクション動画で一躍時の人になった刑事事件専門の弁護士Bruce Rivers。真面目なコメントがかえって面白い。他の動画も見ると、ギャングスタラップの殺人のほのめかしや銃器の扱いについて危険を述べ、犯罪事件について良心的なコメントをするいい人であることがわかる。
64位
闇の自己啓発 / 江永泉、木澤佐登志、ひでシス、役所暁
https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000014734/
縁あって著者の一人が知り合い。親知らずが印象的。全体的に評論同人誌全盛期をの思い出さてくれる、いい本。
63位
LES MESSES NOIRES DE MICHEL FOUCAULT, LE BULLSHIT DE GUY SORMAN / lundimatin
https://lundi.am/Les-messes-noires-de-Michel-Foucault-le-bullshit-de-Guy-Sorman
フーコーが児童買春していたというニュースが、実は左派がフーコー好きだったので嫌がらせのために右派系の論客がでっちあげた、ということを事実関係の調査から追っていった記事。読み物として面白い。ただ、右派だってフーコー好きでもいいのでは、と思うのだが、そういう人はやはりいないのか。
62位
祝融号の火星着陸写真 / 天宇·追箭者联盟
中国の火星探査機の写真。いよいよ宇宙開発時代が再来したようで良かった。火星に最初に有人着陸するのはどの国なのか目が離せない。
61位
批評の教室─チョウのように読み、ハチのように書く / 北村紗衣
https://www.chikumashobo.co.jp/product/9784480074256/
「批評」を北村紗衣の研究テーマである受容論の立場から説明し、ファンがいかにして作品について伝わるように語るかに焦点を当てている。実はテーマとしてはかなり珍しい本。万部刷りを超えているそうで、びっくりだが、マーケット的に正しかったようだ。ただし、あくまで入門書なので、退屈な人には退屈。
60位
書評チャンネル in シラス第1回: 『仏教とエクリチュール: 大乗経典の起源と形成』(東京大学出版会、2020年) 上七軒文庫チャンネル in シラス
https://shirasu.io/t/kamishichikenbunko/c/kami7kenbunkoshirasu/p/20210412180538
『仏教とエクリチュール 大乗経典の起源と形成』だけの書評番組。年を代表する著作の一つを仏教研究者が東西の仏教研究の歴史など踏まえつつ、深く掘り下げる素晴らしい番組。
59位
灶門坎(ザオメンカン) 池袋西口店 / 灶門坎
https://goo.gl/maps/FHHWiQ2XWQyMbP4r6
串焼きと貝焼きのレベルが信じられないくらい高い。串は、羊、豚、牛、どれをとっても満点。ただ、私が教わっていてる中国語ネイティブの先生は「あそこはまぁまぁ」とのこと。どうなってるんだ中国。店内の内装は、もともとライブハウスかダンスフロアだったものを改装しているため、独特。中華ポップスのカラオケがずっと投影されているのもおすすめ。
58位
【築年中古住宅&;#壁天井張り付け編】畳和室から洋室へ【夫の手取り万でも専業主婦を諦めない】 / よめ子
「専業主婦」の名のもとに、購入した築年の家を時間をかけて改装していくあるエンジニアの動画。動画の編集もウィットに富んでいて、飽きない。この回と断熱材の回が私のお気に入り。 https://youtu.be/ovmUowGoPpA
57位
初めての学入門 / 古谷経衡の全軍突撃
https://shirasu.io/t/aniotahosyu/c/aniotahosyu/p/20211122155423
UFO、好きですよね? UFOといえば、幸福の科学が連想されるようになってしまった昨今、90年代オカルトブームとSF好きにとってかかせないミームであるUFOについてわかりやすく解説する動画。NETFLIXやヒストリーチャンネルのUFOものより、ほどよく情報が取捨選択されているので、おすすめ。
56位
防衛省の研究 / 辻田正佐憲
https://www.asahi.com/corporate/info/14506053
『空気の検閲』で内務省の研究を通じた政府の権力論、『文科省の研究』を通じて日本人論、そして本作にて安全保障を取り上げ、国体を構成する3つの要素(権力・国民・軍事)について論じきった。どの著作も面白いが、今回は戦後の日本の安全保障について非常によくまとまった理解ができた。私自身、守屋が現役だった頃の政治闘争についてまったく理解できていなかったので、楽しく読めた。
55位
【小特集】「進化論誤用・悪用・濫用」問題 / 科学史研究 2021年10月号 No.299
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jhsj/-char/ja
ダーウィンとアインシュタインは常に一度も言ったことがない出典不明な名言の主だが、この特集ではそのあたり事情がほどよくまとめられていて、今後ダーウィンの世俗化について調べていくうえで一番まとまった資料になっている。
54位
ムーブ・トウ・ヘヴン 私は遺品整理士です / キム・ソンホ、ユン・リジョン
https://www.netflix.com/browse/my-list?jbv=80990381
『愛の不時着』で北朝鮮兵士の一人を演じたタン・ジュンサンが主人公のホームドラマ。幼馴染の女の子、実は弟思いの兄、そんな兄のことを幼い頃のある体験のせいで嫌っていた弟、そして彼はその兄の息子の後見人になることになる。典型的な家族ものだが、主人公が自閉症であり、弟は地下MMA選手、しかも仕事は遺品整理というなかなか凝ったつくりの作品。最後にシーズン2の予感がある終わり方をしているが、本当にあるかの謎、また、あったとしてもラブコメになりそうで少し心配。
53位
THIS IS POP :ポップスの進化 / オートチューン
https://www.netflix.com/watch/81058760
オートチューン発明者から、T-Painいじめ問題まででてくる面白い回。後半は表象文化論的にはアウラ問題や聴取の考古学にも迫っているのでこの回だけでも見る価値がある。
52位
Cold Beer calling my name / Jameson Rodgers, Luke Combs
毎年必ずあるカントリーのバカソングは、その名も「冷えたビールが俺を呼んでる」。カントリーのメロディとしてはここ5年ほどの作り方として平凡だが、労働者の感じを全力で出している感じがウケたのか。私も確かに、そういう気持ちで生きていることがある。
51位
令和元年のテロリズム / 磯部涼
https://www.shinchosha.co.jp/book/353871/
ドンキュメンタリー映像が好きな人にとって、アメリカほどドキュメンタリー文化が育っていない日本では、その手のものは本でしか読めない。京都アニメーション放火殺傷事件に注目して読んだ人が多いかもしれないが、川崎殺傷事件の殺人犯の抱えていていたある種の虚無さは、文学の無力さを感じるほどのものだった。
50位
กักตัว / Violette Wautier
カランティーン、とたぶん読む。なので。タイ語ポップスが気になって調べたときに見つけた。ベルギーとタイ国籍の親に生まれ、出生地は神奈川県横浜市。ミュージシャンとしてはこの曲で一つ頭が抜けたが、時勢に寄りすぎた曲なので今後は未知数。頑張ってほしい。
49位
Taylor Swiftのセルフカバーアルパム / Taylor Swift
版権の関係で旧盤の発売停止をどうにもできないということで、Taylorのセルフカバーが計画が開始し、今年は2枚出た。FearlessとRED。しかし、ただのセルフカバーではなく、技術的にすべて向上しているので、前の版よりむしろよくなっていた。今後はこちらしか聞かないと思う。
48位
ゴジラ S.P <シンギュラポイント> / 高橋敦史
https://www.netflix.com/watch/80198461
円城塔脚本アニメがこんなに面白くなるなんて全く思ってなかった。しかも、『Self-Refernce Engine』とセカイ系を正直につなげていて、円城塔のようにいったんセカイ系をメタレベルで解体して再度整理するのであれば、セカイ系も悪くないかもしれないと思った。そもそも、セカイ系ゴジラってアツい。
47位
縄文
サントリー学芸賞で竹倉史人『土偶を読む』が受賞したことが記憶に新しいが、今年は研究書でも一般書でも縄文関係の本がたくさんでた。設楽博己『顔の考古学 異形の精神史』、小川侃『梅原日本学の源流』、白石浩之『旧石器時代から縄文時代への転換 土器が出現する頃の文化変動』、岡田康博『三内丸山遺跡』、安斎正人『考古学者の思考法 』、藤尾慎一郎『日本の先史時代 旧石器・縄文・弥生・古墳時代を読みなおす』、小宮孟『イヌと縄文人 狩猟の相棒、神へのイケニエ』など。他にも何冊かでている。久しぶりの縄文ブームだった。
46位
大麻の社会学 / 山本奈生
https://www.seikyusha.co.jp/bd/isbn/9784787234926/
グリーンインダストリーの話なのかな、と思って買うと、まさかの昔からその筋で有名な研究者だったそうで、日本における大麻規制議論がどのように成立しているかを丁寧に論じた著作。日本でのここ最近大麻合法のデモがあることなど、普通に勉強になった。
45位
みを / カラーヌワット・タリン
タイ人古典研究者の開発したくずし字認識アプリ。くずし字を読める人口は減り続けているのに、古典籍の研究者の多くが自動認識に批判的だというのは想像に難くない。しかし、こうしたツールで学習コストを下げないと、くずし字半読者人口はますます減っていくだろう。一部企業も認識システムを開発していたが、アプリに展開などしていない。ビジネスチャンスがないからだ。なので、CODHといった公的組織の後援が重要となる。そうした支援と彼女のたゆまない努力によって成し遂げられた成果物だ。DL必須。博物館の文書を読解する、適当な古典籍を買ってきて試すなどすると楽しい。
44位
Easy on me / Adel
アルバム『30』より。何よりまだ30歳なのがびっくり。風格がすごすぎる。Helloぶりのストレートなポップ・バラード。力こそ感動、の一曲。
43位
Happier than ever / Billie Eilish
https://en.wikipedia.org/wiki/Happier_Than_Ever
彼女が生まれた頃のオルタナティブミュージックを研究して構成されたアルバムで、どこか懐かしいメロディ。私たちの世代にはたまらない懐古的な雰囲気な一方で、ちゃんと2020年代の構成をしていて才能が嫌になる。
42位
Accent Expert Gives a Tour of U.S. Accents – (Part 1) / WIRED
アメリカの方言について知ることができるWIREDの教養番組。やたら発音をネタにするバイリンガル動画が増えてきているが、あちらを入り口にこうした動画を見る方が生産的。バイリンガルといえど、音韻論のわからない人の話は聞いても時間がもったいない。何より、無料でこのクオリティはすごい。
41位
ダウンボリュームジャケット / ユニクロ + J +
https://www.uniqlo.com/jp/ja/products/E443929-000/00?colorDisplayCode=01&sizeDisplayCode=004
ジル・サンダーがデザイン協力した、ユニクロ史上最もかわいいジャケット。ホワイトは瞬殺されていたが、ホワイトが一番かわいい。
40位
アサヒビアリー / アサヒ
https://www.asahibeer.co.jp/products/bialcohol/beery/
ヴェリタスブロイ程度の美味しさで買えるノンアルビールを探していたとき、発売されていたコンビニでたまたま買ってそのおいしさに驚いた。今後の日本のノンアルビールの水準となる美味しさだった。
39位
Olivia Rodrigo / Olivia Rodrigo
https://www.youtube.com/channel/UCy3zgWom-5AGypGX_FVTKpg
ディズニー出身勢。 のもう一つの可能性だった……。かなり頭のいい人らしく、ティーンの鬱屈を計算して歌っているうえ、ずっとビルボードチャートにいた。 Drivers Licenseが耳から離れない。
38位
科学技術社会学(STS)テクノサイエンス時代を航行するために / 日比野愛子、鈴木舞、 福島真人編
https://www.shin-yo-sha.co.jp/book/b588100.html
STSの入門本として最も優れている本。STS関係では『ラボラトリー・ライフ』の翻訳が出たが、正直こっちを読んだほうが良い。STSの射程は広い。あと、個人的に福島先生と知り合いなのだが、ゲンロンカフェでトークをしたら楽しい人。
37位
言霊 / 阿修羅MIC、孫GONG、漢 A.K.A GAMI
MC三人に加えて、GREEN ASSASSIN DOLLAR・FEZBEATZ・Spikey Johnが揃っているので、あの界隈が大集結している点で、ウォッチャーとしても注目の楽曲。
36位
邪馬台国前後の古代日本史(あやしい) / minerva scientia
木簡などでの考古学的考証や文献学的な精査に不安があるが、邪馬台国がどこにあるかを、当時の音韻を復元することで迫るかなり興味深いアプローチ。共同研究の新しい展開の可能性がある。
35位
D.P. -脱走兵追跡官- / ハン・ジュニン、キム・ボドン
https://www.netflix.com/browse?jbv=81280917
シーズンも決まっているドラマ。脱走兵逮捕の仕事をする中で脱走原因のほとんどは、いじめということらしく、いじめ問題にフォーカスがあてられる。脱走兵の居場所を特定するミステリ要素で基本的に引っ張っていく前半と、主人公と親しかったいじめられっ子のオタク男性の人格が破綻していく後半の構成。かなり軍隊批判の要素が強いのだが、こういうドラマを放送できる韓国の文化コンテンツの地位の高さを感じた。
34位
聖徳太子と法隆寺 / 紡ぐプロジェクト
https://tsumugu.yomiuri.co.jp/horyuji2021/
聖徳太子を中心とした世紀の日本仏教の様子を知ることができる貴重な展覧会。類例のない四天王像も来ていて、展覧会の文脈でみたときにその価値がわかるようになっているなど、展覧会構成もよかった。ただし、聖徳太子信仰については謎だった。
33位
デューン / ドゥニ・ヴィルヌーヴ
https://wwws.warnerbros.co.jp/dune-movie/
いまののすべての元ネタが入っている『デューン』の映画化。なぜいまさら、とも思ったが、ヴィルヌーヴにはなにかそういうものが託されているのかもしれないし、『ファウンデーション』のドラマ化しかり、古典作品を比較的安価に製作できる環境が整ってきたのかもしれない。ちなみに内容は、やっぱり『デューン』だった。ヴィルヌーヴは画面構成をかっこよく作れる人で、『マトリックス リザレクション』を観ると、やっぱりヴィルヌーヴはすごいなと思った。
32位
革命と住宅(3) 第2章 コムナルカ──社会主義住宅のリアル(前) / 本田晃子
コムナルカは本当にやばい。社会主義における家族の解体の思想について丁寧に追っていく一連の論考の一つなのだが、驚異的な話が続いていく。
31位
料理と宇宙技芸(4) 炒飯 / 伊勢康平
鍋の気の話が本当に面白かった。炒飯を作ることは本当に難しいので、哲学的においしいレシピは見事だった。
30位
火星へ / メアリ・ロビネット・コワル
https://www.hayakawa-online.co.jp/shopdetail/000000014874/
コワネルの宇宙女性飛行士シリーズの邦訳第二弾。フェミニズム第四波以降のキャリアと家庭のテーマを火星探査に伴う時間経過によって表現し、しかも火星までの旅程もスリリング続き、同性愛をテーマにした仕掛け、など矢継ぎ早に展開されてうなるほど面白かった。
29位
【講義回】PCゲームのハッカー文化を整理する——デモシーンからVTuberまで 松下哲也のアート講釈日本地
https://shirasu.io/t/nipponchi/c/nipponchi/p/20211105144600
MOD文化から始まる、マシニマやUnreal Engineの登場のタイミングなど、現代のVFXではかかせなくなったゲームエンジンの歴史を簡単に把握することができる。2000年代洋楽をyoutubeで漁っていた人は、あの謎の3DCGの自主制作PVがマシニマよるものということを知ることができる。
28位
ケア
2021年の批評のキーワードは「ケア」だった。「ヤングケアラー」が人口に膾炙し、文芸批評としては小川公代『ケアの倫理とエンパワメント』が出た。桜庭一樹による鴻巣友季子への公的な時評取り下げ要求の際にも、桜庭の小説は介護を描いたもので、鴻巣は小川などの一連の批評を念頭においていた。なお、この鴻巣・桜庭は2016年に「E・A・ポー ―― ポケットマスターピース〈09〉」で編著をしている。哲学方面では、徳永哲也『正義とケアの現代哲学 : プラグマティズムから正義論、ケア倫理へ』などが出た。ギリガンとノディングスについて体系的に学ぶことができる。2018-2019年は絶滅/ポスト・ヒューマン、2019-2020年は感情・情動(affect/emotion)で、2021年はケアの年だった。来年はその2つが結びついて新しい実存主義となるのかもしれない。
27位
理論編(スポーツ #1)「水中批評への道!まずはスキューバダイビングについてあなたの誤解を解く!」 / さやわかのカルチャーお白洲
https://shirasu.io/t/someru/c/someru/p/20211106215714
スキューバダイビングについて完全に誤解していたので、大変勉強になった。スキューバのゲーム的な感性や実際の映像など、興味深い。スキューバ界に外部から新しいロジックをもった業者が来れば、ビジネスチャンスに確かになりそう。
26位
【音楽講義回+突発ゲスト回(山下Topo洋平さん)】特製音源10曲でたどる国歌「君が代」超入門〜いかに誕生し、定着し、戦争を乗り越え、論争になり、そして法制化されたのか?〜 / 辻田真佐憲の国威発揚ウォッチ
https://shirasu.io/t/tsujita/c/beobachter/p/20211224
山下Topo洋平のケーナ演奏によるフェントン版、行進曲版、唱歌版、そして海ゆかばを聞くことができるだけでなく、辻田正佐憲による解説で歴史や社会に与えた影響について丁寧に聞くことができる。飲みすぎた辻田が電話参加の山下を置き去りにして寝てしまうが、山下が君が代をケーナで演奏したところ、その刹那に覚醒するシーンは大笑いできる。
25位
擬死的アディクション――現代実在論と東浩紀の(非)ポストモダニズムの関係について / 仲山ひふみ
http://www.seidosha.co.jp/book/index.php?id=3566
近い世代の同ポモ論として感銘を受けた。注釈なしでこうした自由な文章を書くことはとてつもなく尊い。寝付けない深夜に一気読みした。自由の唯物論的再構築のプロセスは、仲山は美学にも非常に通じているので、美学において自由を唯物論的に再構築してほしい。
24位
アウン・コーヒー MYANMAR COFFEE LAB
ミャンマー人と日本人で運営しているカフェ。フルーティーな味のコーヒーはあんまり好きではなかったのだが、ミャンマーコーヒーの場合は全然平気だった。特に、カフェメイミョーという練乳のカフェオレがとても美味しい。豆も売っているので関心のある方はぜひ。軍事政権反対運動の影響で荷役の人々がストなどをしているせいで、ときどき入荷の危機になるというのでふだんはこちらで豆を買うようにして応援中。
23位
The Values in Numbers Reading Japanese Literature in a Global Information Age / Hoyt Long
日本文学研究者で、先行研究をおさえたうえで計量文献学の手法を取り入れて分析するすばらしい著作。日本人研究者が私小説というジャンルにおける私の概念について喧々諤々の論争してきたが、実はあまり指摘されていない「そもそも言葉遣いが同時代の別の小説と違う」という点を統計的に示している部分など白眉だった。読んだままの偏見を超えるために必要な道筋を示している。
22位
テスカポリトカ / 佐藤究
https://kadobun.jp/special/tezcatlipoca/
ここ最近の直木賞作品で一番面白かった。NETFLIXとかにありそうなクライム・サスペンスもの。メキシコ・カルテルの存在をアステカ文明とつなげ、根源的な暴力性と民族主義を繋げる政治的な表現としてかなり綱渡りなことをしているものの、犯罪の規模がでかすぎてうまく処理されていた。ただし、システムの崩壊過程を個人起因にした文学的すぎる処理が私はあまり好きではない。
21位
『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』は模型のアニメである / 松下哲也
https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309291468/
ホビー文化とエヴァンゲリオンの関係ついてはこれまで深く研究されてこなかった。松浦寿輝のエッフェル塔論を引きつつ、模型とアニメーション表現についても広く考えるきっかけになる名論文。
20位
One Last Kiss / 宇多田ヒカル
DrakeのPassionfruitを日本語で再現し、印象的なパンチラインを散りばめ、『初恋』以降も音楽的な挑戦を意欲的に続ける姿には驚嘆。PVも庵野秀明監修で、それの出来もすさまじい。
19位
当事者から共事者へ 第12回 リア充と共事 / 小松理虔
https://genron.co.jp/shop/products/detail/586
承認をめぐる問題と生存をめぐる問題のすれ違いについて自身の反省を込めつつ書いていて、非常に読ませるエッセイ。筆者は男性だが、男女問わずこうした問題に触れざるをえない瞬間があるだろう。
18位
湘遇Tokyo
https://note.com/asheng/n/n40f131e7c597
客のほとんどは中華系なので日本語で挨拶などは基本的にされない。四川料理とも違う辛さの料理で中華料理のスパイスの多様性を堪能できる。魚がうまい。
17位
ゲンロン12 / 東浩紀編
https://genron.co.jp/shop/products/detail/587
人文系の雑誌では、一年をかけて発刊できるということもあり、ゲンロンより面白い雑誌はない。今年もどの記事も面白く読んだ。ここのコメントを書くために再度かんたんに読み直したのだが、やはり面白かった。ことあるごとに読み直したい。
16位
研究業績とは何(であるべき)か? / 佐倉統
https://www.iii.u-tokyo.ac.jp/manage/wp-content/uploads/2021/03/100_2.pdf
業績の定量評価の歴史を論じた論文。信仰がいかに虚無かを明らかにしつつも、統計学による客観的評価もやめるべきではないことを示す素晴らしい論文。
15位
「させていただく」の語用論—人はなぜ使いたくなるのか 椎名美智
https://www.hituzi.co.jp/hituzibooks/ISBN978-4-8234-1056-7.htm
ポライトネス理論やベネファクティブ理論の勉強にもなるし、問題の立て方から解決までの論証など、見事な構成の書籍。楽しまさせていただきました。
14位
時間の流れと相対性理論:ゲーデルの時間論再訪 / Jimmy Aames
https://researchmap.jp/jjaames/presentations/36054670
同世代哲学者で一番私が将来を期待しているのがジミー・エイムズ。ロヴェッリの時間の非実在論など最近また時間の実在論が問題になっているが、ここでは「時間の流れ」の実在性を擁護。ゲーデル時間論では時間は存在しないが、因果ダイヤモンドなど最新の研究に基づいて時間の実在性を探求。たぶん本など執筆しているのだろうけど、単著を早く読みたい。
13位
観音像とは何か 平和モニュメントの近・現代 / 君島彩子
https://www.seikyusha.co.jp/bd/isbn/9784787210562/
日本では仏教研究が非常に進んでいるいっぽうで、仏教と日本の関わりがあまりにも長すぎるため、まだまだ手つかずの領域がたくさんある。その一つが、観音像の研究だ。明治時代以降も観音像はひたすら作成されたのだが、廃仏毀釈以後に製作された戦前・戦中の観音像の歴史的背景や、戦後の巨大観音像ブームのまとめなど、日本近代史を考察するうえでも重要な著作。
12位
Dynamite / BTS
ビルボードチャート1位になることの驚きがある。「カンナム・スタイル」のようなコミカルな要素はなく、音楽も近年のポップミュージックを研究しつくしていて、驚異の一曲。韓国の文化プロパガンダが世界的な勢いとなったことを感じさせた。
11位
ルックバック / 藤本タツキ
https://shonenjumpplus.com/episode/3269754496401369355
私と同い歳で唯一社会・文化的影響力の強い人の短編。『チェンソーマン』では、女性の肉体を食べたいという作者の欲望が外連味となっているが、物語内容はいろいろなものの切り貼りで、哲学的な深みもないし、その点についてはまったく見込みがない。とはいえ、マンガが圧倒的に、震えるほどうまい。すごい才能。画面構成、コマ割り、参照元の画面の組み合わせ、非の打ち所がない。「ルックバック」では、京アニ事件をテーマにクリエイターの実存を描いてみせたが、上記の故に、精神障害者描写がツイッターで人文思想系の学者に批判され、結果的に台詞が変えられてしまったように、人物造形が陳腐で退屈だが(私は倫理や事実よりそのガジェット感が気になってしまった)、ここが良くなってしまうととんでもないマンガ家になるだろう。なお、これについては、加害者の背景が描けないのではなく、私たちの世代はわりと大きな絶対悪が存在していて、それについては是非もないという排外主義にも通じる精神性があるのだと思う。
10位
華姐私房菜
2021年から紹仙房という馬場の店を一時的に間借りしていたが、年内にはなくなるかも。五指毛桃といった調味料のように、広東料理の奥深さを知ることができる貴重な店。信じられないくらい美味しい。店では広東語が主に話されている。
9位
さようなら全てのエヴァンゲリオン ~庵野秀明の1214日~ / NHKエンターテイメント
シン・エヴァンゲリオンを考えるうえで必聴の映像。庵野が宇部新川駅の階段を駆け上るシーンですでに感動的。
8位
ミラベルと魔法だらけの家 / バイロン・ハワード、 ジャレド・ブッシュ
https://www.disney.co.jp/movie/mirabel.html
まさかのガルシア・マルケス。コロンビアの内戦に取材して作成した映画で、家族三代の物語。女性たちが主人公とはいえ、男性にも共通した悩みをもつ人は多いはずで、幅広い層が見ることができる。『イン・ザ・ハイツ』もそうだが、今回もリン=マニュエル・ミランダが楽曲作成に参加。Hamiltonの成功といい、ミラベルよりミランダのほうがすごくないか、とも思ってしまう。
7位
国威発揚レコードコンサート 宣戦布告篇、満洲篇、終戦記念日直前企画、音楽で聴く日中戦争 / 辻田真佐憲の国威発揚ウォッチ
https://shirasu.io/t/tsujita/c/beobachter/p/20210620
https://shirasu.io/t/tsujita/c/beobachter/p/20210710
https://shirasu.io/t/tsujita/c/beobachter/p/20210813
https://shirasu.io/t/tsujita/c/beobachter/p/20211004
文化と軍歌についてまとまって勉強できる動画。戦前のレコードの低音質に伴う陰気臭さ、戦中期の短調ブーム、日中戦争の軍歌読解に求められる教養などについても解説。また、山田耕筰といった当時から実力のあった作曲家の曲は今聞いても優れていることがよく分かる。軍歌に対するある種の偏見を拭って戦前の文化と向き合うことができる。
6位
ディア・エヴァン・ハンセン(映画)/ Stephen Chbosky
ティーン向けミュージカルの新たな代表作。監督のは、近年、の監督や のライターとして活躍。年に原作が自分の映画 を監督。テイストが似ているので抜擢されたのかどうかわからないが、いい映像化だったのは間違いない。
5位
イルミネーティングサプルブレミッシュクリーム40ml / Klairs ( by Wishtrend )
https://ameblo.jp/lovewishtrend/entry-12684623897.html
KlairsのBBクリームで保湿と肌のライティングをかなり上げ、肌の肌理が細く見え、白くなる。皮膚に赤みがあり、肌が乾燥しやすい人におすすめ。今年は本当にお世話になりました。
4位
五十嵐太郎×山梨知彦×東浩紀 「いまこそ語ろう、ザハ・ハディド」 / ゲンロン完全中継チャンネル
https://shirasu.io/t/genron/c/genron/p/20210514
東京五輪での最初のつまずきの石だった新しい国立競技場案の舞台裏。安倍晋三政権が結局いかに日和見的で、だからこそメディア圧力を加えたがったのかがよくわかる。山梨が語る、突然の白紙撤回の報道を聞いた時の呆然とするチームの様子。あるいは、建築雑誌ジャーナリズムの徹底した無視、といった日本の様々な問題が浮かび上がった。必見の番組。
3位
大奥 / よしながふみ
https://melody-web.com/sakuhin/?id=3
今年完結した大傑作。『きのう何食べた?』が映画になるなど、2021年に大活躍した作家。私たちの知っている歴史では、史料に詳しく書かれていないのだから本当はこういう歴史だったのかもしれない、という陰謀論的な想像力としか言えないが、ある種の希望を残す形で物語を閉じていくことは、まさしく性差の政治的権力の脱構築。SFとしても傑作、哲学的な内省の深さも圧倒的作品だった。真ん中あたりの話を忘れているので、読み返したい。
2位
イン・ザ・ハイツ(映画) / Jon M. Chu
https://wwws.warnerbros.co.jp/intheheights-movie.jp/
チュー、ミュージカル映画こんなふうに撮れるのかい、と思った。現代のいいミュージカルの条件はできるだけ複雑な物語の展開はなく、できるだけ小さな人間ドラマに終始するべし、というのがあると思っていて、そういう点では確かに『クレイジー・リッチ!』と連続性はあるといえる。カット割り、アニメーション演出など古きよきミュージカル映画の引用もしており、非の打ち所のないミュージカル映画だった。
1位
シン・エヴァンゲリオン / 庵野秀明
https://www.evangelion.co.jp/final.html
THE END OF EVANGELION を見事に総括した。人生の中のアニメーションでベスト1。90年代で描かれていた世紀末・厭世的テーマを20年代において現実の中の可能性を生きることに直面させる見事な展開、プリヴィズ撮影技法の応用の数々などアニメーション史に残る傑作。