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佐藤正尚 南礀中題

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高山は、日本で唯一郡代の陣屋が残っている。天領たる高山の郡代は広大な屋敷を持ち、歴代の行政を司る郡代の住む屋敷と行政を支える事務作業する役人たちの作業部屋がある。この陣屋は、驚くべきことに昭和44年まで県事務所として使用されていたそうだ。最初の東京オリンピックの頃にはまだ現役の役所だったということだ。

陣屋でもう一つ興味深かったのは、いわゆる悪代官に対する百姓一揆を非常に評価した展示構成をしていた点である。天領であることから検地をかなり徹底的にやろうとし、重税が予想された百姓が一揆を行ったり幕府に直訴して二万人近くが処分されたこともあったそうだ。一番ひどい一揆の時の記録は当時の農民が書いた『夢物語』という本があり、端正な字で綴られたおそらく現物が展示されていた。この本を見るまで、私はかつて中江藤樹が主に農民を相手に思想を説いていた理由がよくわからなかったのだが、この本を見て彼がなぜそういった活動をしていたのがよくわかった。俳諧でも武士・商人・農民が入り混じっていたそうだが、中江の話を面白がる人や真剣に聞く人は私たちが想像していたよりも遥かに多かったのだろう。

陣屋を後にして、日枝神社に入った。雪降りしきるなかでこんなところに行く人はいないらしく、階段に積もった雪は柔らかかった。神社の関係者が理数系らしく、計算錯覚学を推していた。本殿を拝んでから絵馬をなんともなしに眺めていると、にじさんじのキャラを応援しながら「日本が日本を貶めたり害したりする輩」という強烈な文章書いてあるものを見つけてしまった。絵馬に独白する国士のいる町について考え込んでしまった。

帰りは名古屋に寄り、蓬莱軒でひつまぶしを食した。大変おいしかった。近所にブックオフがあったのでこの地域の古本事情を調査。トーマの心臓の文庫本が100円程度だったので購入して新幹線から読み出したが、化け物のような漫画のうまさで驚いた。

家についてうまく寝れず、午前3時頃に就寝。